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《イケメン戦国》時を越えて

第11章 時を越えて〜春日山城〜


〜謙信目線〜 
俺には幼き頃からの許嫁がいた。養父の同盟国の姫だった。名は『清(せい)姫』。
いずれはその清姫を妻に迎え生きて行くのだと思っていた。
確か10の頃だったか…。清姫が流行り病にかかり、床に伏したのは。
それまでの元気な姿が嘘のように日に日にやつれ、痩せ細って行く。そんな清姫の姿を見るのはとても辛かった。
病に侵されてから数週間後、清姫は、死んだ。
当然、悲しかったが、まだ子どもだったせいかその悲しさをいつの間にか忘れ、その先の日々を送った。

次は15の時だった。
人質として城に住まう『伊勢姫』と恋仲になった。
ゆくゆくは夫婦となるつもりだった。
でも、伊勢姫は人質、謂わば上杉家とは釣り合わない格下の家柄だという理由で、家老たちに猛反対された。
今ならば、誰がなんと言おうと己を通すが、当時はまだそんな力はなかった。伊勢姫とは引き離され、気付けば伊勢姫は違う大名の元へ輿入れさせられようとしていた。
そして、姫は自ら命を絶った。
伊勢姫からの最期の文には
『死してもなお、謙信様をお慕いしています。』
そう書かれていた。
姫をそこまで追い込んだ自分を呪った。そして、
(一日でも早く伊勢姫の元へ行かねば)
そう思った。

それからだ。俺が『戦狂い』と言われるようになったのは。
死ぬために自ら率先して戦場へ向かう俺を周りは『軍神』だと持て囃した。
死を覚悟して赴く戦場から、俺は毎回生還した。どんなに前線に立とうとも、大きな傷を負うこともなかった。
それを繰り返すうちに『己は戦では死なない』と悟った。
そう思うと戦が…人を斬ることが楽しくなった。
人を斬れば斬るほど、自分の中にドス黒いものが溜まって行き、死に近付いているような気がして血が騒いだ。

伊勢姫の気持ちを裏切ってはならないと、姫の死後は女人を一切近づけなかった。でも、本当は伊勢姫を理由に女人を避けていただけだった。二人の姫を死に追いやりながら、それでも死なない俺は女人の生を喰らって生きる鬼なのだ。二人の姫ように俺に生を喰らわれ、死ぬ女子が出ぬように『女嫌い』だと公言し、女を遠ざけた。

女子に心を乱されるのはもう嫌だった。

そんな日々を送っていた俺の前に舞は唐突に現れた。
最初に見た矢馳せ馬の姿は、俺が知る『姫』とは全く違った。それでも
(こんな女もいるのか)
くらいにしか思わなかった。
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