第15章 もう1人の親友
「おーい、そんな落ち込むなよ。俺だって別に、黒尾のこと1から10まで知ってるわけじゃないからな? 」
『それはわかってる! でも、そんな全部知らないやっくんから「いるよ」って言われたら、逆に安心できるじゃん! 』
「どういうことだよ...そんなに知りてえなら、研磨に聞いてみれば? 」
『研磨くんはダメ! 情報の信憑性が高すぎ。黒尾くんに聞いてるようなものだよ。』
「なんだそりゃ。意味わかんねえ。」
はあー...。
やっぱりいないかぁ。
ますます彼女の可能性が上がっただけだった。
「おーい、おふたりさん。」
教室の入口。
夕日に照らされて延びる影。
「げっ、黒尾。」
「げってなんだよ。やっくん酷くねぇ? 」
なぁ? なんて。私の方に向かって言うから。
昨日偶然見たことや、さっきまで黒尾くんの話をしてたこともあって、気恥ずかしくて。
思わず目を背けてしまう。
「んだよ。部活いけよ。」
「その部活が終わりそうだから様子見に来たんデスーっ。」
「もーちょいで終わる。自主練くらいなら行けるから、行くわ。」
「ん、リョーカイ。俺今日用事あって帰るから、鍵だけよろしくな。海にも言ってあるけど。」
「おー、わかった。」
「んじゃ、ガンバッテネ。」
「うっせぇ早く行け。」
「やっくん何で今日そんなに辛辣なの?? 」
ひらひらと手を振る黒尾くんに、私も辛うじて手を振り返して。
パタンと閉じた扉を確認してから、ばたりと机に突っ伏す。
『用事ってなに〜〜デートかな〜〜!! 』
「お前なんなの? 隠す気が無くなった途端にこれかよ。」
『やー、やっぱりやっくんに知られてるとなんかほっとするっていうかさ...』
さすが、そばで見てくれていた人は違う。
聞いてもらって少し気が楽になった。
『ありがとね、やっくん。』
「...さっさと終わらせろよ。部活行くぞ。」
『はーぁーい。』
間延びした返事をして。
ホチキスを閉じる音と少しのお喋りがまた教室内に響き始めた。