第15章 もう1人の親友
「...あ〜...。」
なんとも微妙な顔をするやっくん。
「昨日? 」
『うん。美華とカフェに行ったら、偶然会って...。』
「あぁ。」
『もー、美華と遊んでるのに集中できないし、今日もモヤモヤするし...。』
「踏んだり蹴ったりだな。」
『そーなの。』
やっくんは苦笑しながら、トントンと資料を重ねてバチリとホチキスで止める。
「そいつ、彼女いたの? 」
『聞いたこと無かった...。』
「ふーん。」
『しかも年上っぽい。』
「年上!? やり手だな!! 」
やっくんは驚いた顔で私の方を見る。
『.....ちょっと羨ましいとか思ってるでしょ。』
「いや羨ましいだろ! 男の夢だろ! 年上のオネーサンと付き合うとか! 」
『傷抉らないでよーーやっくんのばかあーー! 』
「あ、悪い。」
『ほんとに思ってる?』
「思ってる思ってる。で? そいつが彼女いるって、その時知ったの? 」
『うん...。』
「ふーん、なるほどな。」
『まあ、かっこいいし優しいし気遣いできるし、女の子の扱いも慣れてるし...いたんだろうなぁ...いない方がおかしい。』
「...お前、そんなに仲良い男いたっけ。」
『え? 』
とめていた資料から目を離して、やっくんを見る。
やっくんは私に目を向けてはいない。
「普通に話してるのはともかく。そんな、気遣いがどーだとかわかるくらい親しい男、いたんだな。」
『...どういうこと? 』
「だって倉尾、バレー部入ってから部活に時間かけてばっかじゃん。そんなに相手のこと詳しくなる時間あったんだなって。お前が最近ずっと一緒にいるのって、俺らくらいだし...。」
同学年なら、俺と海と黒尾...
そう言いかけたやっくん。
あ、と私が思ったのと。
あ、とやっくんが思ったのは、きっと重なる。