第24章 貴方と温まる夜〜大晦日特別編〜
「貴様の打ち掛け姿を見たい。この様な席でなければ、貴様は中々着飾ろうとせんからな」
「だって...........」
「たまには俺の言うことを聞け」
立ち上がった信長様は、優しく笑って私に手を差し出した。
「ごめんなさい」
いつも、どんな時でも差し出してくれるこの温かな手を取り立ち上がる。
「じっとしていろ」
私の小袖を綺麗に整えてくれると、打ち掛けを軽く持ち上げ袖を通すように促され、私は早くなる鼓動に気づかれない様、そっと袖を通した。
「あの、.....変じゃないですか?」
「今すぐ抱きたい位に綺麗だ」
ぎゅっと抱きしめられ目が合うのは口づけの合図。
そっと目を閉じると唇が重なり、優しく啄まれた。
去年の今頃は顕如様の隠れ家にいて、父と母の仇を撃つ事だけを考えてた。
「行くぞ」
「はい」
あれから一年。
仇だと思っていた人に手を引かれ恋しく思う自分がいるとは思ってもいなかった。
「信長様」
「どうした?」
名前を呼べば優しく振り返るあなたに心が幸せで満たされていく。
「来年も、宜しくお願いします」
「ふっ、何だ、除夜の鐘も聞こえて来ぬうちにもう締めの挨拶か?」
「だって、幸せで.......」
「あまり煽るな。今すぐにでも天主に連れ帰りたくなるが、秀吉がまた鬼の形相で待っておる」
「ふふっ、そうですね」
軽く触れるだけの口づけをされると、手を繋ぎ広間までの廊下を一緒に歩いた。
来年の今頃も一緒にいられますように。
こうして手を繋いで笑いあえますように。
私の言葉足らずな所も少しは直りますように。
あっ、信長様の俺様な所も少しは直りますように。
「.......おいっ、貴様、今何か悪い事を考えたであろう?」
「えっ、どうしてそれを!?」
「やはりな。貴様の事は全てお見通しだ。今宵は寝られると思うな?そのまま新年の挨拶をさせてやる」
「えぇっ!」
「ククッ、そんなに喜ぶな」
「喜んでませんっ!困ってるんです」
信長様と初めて過ごす年の暮れは甘くて刺激的で......
その夜、逞しい腕に抱かれながら、私は新たな年を迎えた。