第9章 休戦日
「はぁ、はぁ..............」
私の上に被さって力を抜いた信長様の荒い呼吸が首筋にかかる。
いつもなら、冷たく身体を押して退いて欲しいと言ってきたけど、今夜はまだ、魔法は解けない。
初めて、目の前にある私の好きになった愛おしい人の髪を両手で撫でた。
ぴくっと、信長様の頭が反応して顔を上げた。
「.......っ、あまり可愛いことをするな」
「えっ?」
くいっと顎をもたれると口づけられた。
「んぅっ、......っは、待って」
まだ呼吸が整わないのに...........
容赦なく呼吸を奪われ息苦しさを感じた私は息を求めて唇を離した。
「はっ、はぁ、はぁ、信長様.......苦しいです.......」
「だめだ。まだ、全然足りん」
「はっ?」
「もっと貴様が欲しい」
ちゅっと、無邪気な笑顔で私の唇に軽く口づける信長様........
「やっ、私は......」
もう、お腹も心も満たされて.....
「夜明けまではまだ時間がある。せっかくの休戦日だ。貴様を存分に感じたい」
ちゅっと、イタズラなキスが目元に落とされた。
「...............っ、」
そうだ、夜が明ければ私達はまた敵同士に戻る。
夜が明ける前に、あなたの腕の中で本当に溶けて消えてしまえたらいいのに。
信長様の首に腕を巻き付けると逞しい手に優しく抱きしめられ、
「空良、貴様の全てを愛してる」
とびきりの愛の言葉が耳元で聞こえると、緩やかな抽送が始まった。
..........夢や魔法はいつかは覚めるもの。
いつかは信長様の元を去らなければいけないとは思いつつも、そのいつか、が間近に迫っているとはその時の私は思いもせず、その夜は優しく抱きしめる腕の中で眠るように意識を手放した。