第10章 一方通行(沖田裏夢)
「遼、どうかしたのか?」
「いっ、いえ、私もお風呂行ってきます」
沖田の横をすり抜けて風呂に行くと、温めの湯で汗を流す。
ふと自分の体を見ると、胸や腹、太腿に沖田が付けた痕があり、何とも言えない感情に囚われた。
風呂を出て、軽く身支度を整えて戻ると、沖田はすっかり用意が整っており、ますます虚しさが去来する。
(沖田さんは本当に、それだけでいいんだ……)
深い溜息をついて着物に手を伸ばすと、突然その手を掴まれた。
「沖田さん?」
「まだ時間は大丈夫なんだろ?」
「えっ、あ、はい……」
訝しがりながら頷くと、沖田は「じゃあ、飯でも食いに行くか」と遼を誘う。
思い掛けない一言に、遼は驚きつつも頷いた。
「じゃあ、おめかししねぇとな」
「?」
ニヤリと笑った沖田は、遼を引き寄せると襦袢の袷を開いてきつめに乳首を抓みあげる。
「やっ、何?!」
「まあまあ、おとなしくしてろって。……んっ、ちゅっ」
遼の乳首に吸い付いた沖田は、舌先で刺激を与えて完全に起たせると、懐から何かを取り出した。
沖田の掌に載せられたのは、銀色に鈍く輝く小さな鈴。
細く透明な紐がついており、遼は首を傾げる。
「コレを、こうしてっと」
「んっ、や……」
沖田は紐を遼の乳首にぐるぐると巻き付けて結ぶと、満足そうに頷いた。
「外すなよ。コレを反対にもつけてやるから、家に着くまで落とさないよう我慢してみろ」
「どういう……」
「乳首起たせてねぇと、落ちちまうぜ。もし家まで我慢出来たら、次会った時にご褒美をやるよ」
鈴をつけられた乳首をちゅうっと吸い上げられ、遼はぞくりと背を震わせる。
チリ、と遠慮がちになる鈴の音が、一層遼の体と心を刺激した。
反対側にも鈴をつけた沖田は、戸惑う遼に口吻る。
「着替えたら、行くぜ」
遼はゴクリと喉を鳴らして頷くと、襦袢をきつめに身に付けた。
恐る恐る着物に袖を通して帯を締めると、まだ落ちていないことにほっとする。
「お待たせしました」
声をかけると、沖田は遼の手を取り部屋を後にした。
──つづく