第10章 一方通行(沖田裏夢)
沖田は二三度腰を揺すり下半身を痙攣させると、ズルリと自身を引き抜いた。
崩れるように布団に倒れる遼を見ながら、沖田は避妊具を外して中に溜まった物を遼に見せつける。
「こんなに出たぜ。これを全部注いでたら、孕んだかもな」
不敵に笑う沖田を見上げながら、遼はぼんやりとした頭で現状を思い起こした。
(私、何してたんだっけ……?)
沖田と会って、そのままホテルに連れ込まれ、いつものように満足するまで抱かれる。
そうして気付いたら、一日が終わっているのだ。
「遼?」
沖田に名前を呼ばれ、遼は意識を引き戻される。
瞬きを繰り返していると、優しく頭を撫でられた。
「大丈夫か。気ぃやりすぎたか?」
「んっ……いえ、少し疲れて」
「体力ねぇなァ」
沖田の笑顔に、遼はますます混乱してしまう。
行為の間の沖田は、自分勝手で些か乱暴だ。
思うままに玩具を使ったり、プレイ紛いの事も要求する。
けれど、行為が終わった途端、遼が好きになった「沖田総悟」になるのだ。
背伸びを一つして、風呂に向かった沖田の背中を見送って、遼は気怠げに体を起こすと、冷蔵庫から水のペットボトルを取り出し、喉の渇きを癒す。
「はあっ……今日もまた、これで終わりか」
時計を見ると、夕食には少し早いが、帰宅しても違和感のない時間だった。
「どこかでご飯食べて時間潰そうかな」
二年と少し前の争乱で家族を失った遼は、江戸で伯母夫婦が経営する酒屋に身を置いている。
実の娘のように可愛がってくれる伯母夫婦に心配を掛けるのは本意ではない為、沖田と会う際は出来るだけ早く帰宅出来るようにしていた。
「ん?
うわっ、何コレ……」
ベッドに転がる玩具が視界に入り、遼は絶句する。
いつもより中を擦られる感覚が強いと思っていたが、今日のは想像以上にグロテスクな形をしていた。
デザインは男性器そのもので、異様にボコボコしている。
「見なきゃ良かった……」
一人落ち込んでいると、風呂の扉ががちゃりと音を立て、遼は慌てて脱ぎ捨てていた襦袢を羽織った。
今更感はあるが、裸を見られるのは抵抗がある。