第9章 少しだけ未来の話(銀時裏夢)
銀時は遼を正面に向かせてがっちりと肩を掴む。
「遼、もう一回言うからちゃんと答えろよ。不服だが、こいつらが証人だ」
銀時の迫力に圧され、遼は息を飲んだ。
視界の端に、にやにやと笑う沖田の顔や、興味なさそうに煙草をふかす土方の姿が見えて遼はますます緊張する。
銀時は一度だけごくりと喉を鳴らすと、言葉を続けた。
「俺と、家族になってくれ」
真剣な表情の銀時に、遼は言葉を探して視線を彷徨わせる。
「えっと……
よ、よろしくお願いします」
かき消えそうな声で答えた遼を、銀時は数度瞬きをして抱き寄せた。
「うわっ、銀ちゃんみんなが見てるって!」
「見せつけてんだよ。オイ、オメーらこれでわかったか」
「イチイチ噛みつくんじゃねぇよ。煙草がマズくなる」
「まぁまぁトシ、良いじゃないか今日くらい。万事屋、俺たちが証人だ。遼ちゃんを裏切るような事したらどうなるか、わかってんだろうな?」
ニヤリと笑った近藤に、銀時は「当たりめぇだ」と不敵に笑う。
銀時の腕の中で、居たたまれなくなった遼が逃げだそうともぞもぞするが、それを察した銀時は腕の力を強めた。
「ちょっ、銀ちゃん離してよ」
「もっと可愛くお願いしてくれたら離してやるよ」
「バカじゃないの。もうっ、はーなーしーてー」
ムキになって銀時の腕を剥がそうとする遼と、嬉しそうに笑う銀時の姿に、近藤はふっと笑みをこぼす。
「平和だな」
「?」
「あの万事屋が所帯を持つなんて、平和になった証拠だよ」
「そうですね」
あの辛く苦しい戦いを乗り越えて漸く日常が戻ってきたのだ。
今度こそ、銀時が幸せになる時なのだろう。
「万事屋、友としてお前の幸せを歓迎するよ」
──おわり──