第7章 嫉妬(銀時裏夢)
干し終えた洗濯物を見て、遼は満足げに目を細めた。
結婚してから約二か月半、真選組近くの屋敷に居を構え、日々充実したものになっている。
「後は──」
何をしようかと思っていると、インターフォンが鳴った。
「はぁい」
ぱたぱたと玄関へ急ぐ。
「すみません、お待たせしまし──」
「よお。久しぶりだな」
扉を開けてそこに立つ人物を見た瞬間、遼はその場に凍りついた。
来るはずのない人物の来訪に、唇が戦慄く。
「そんなに警戒すんなって。挨拶に寄っただけだよ」
「銀、ちゃん」
「旦那は仕事か?」
「あ、うん……あの、」
「そっか。あのさ、ちょっとだけいいか?」
そう言って玄関の中に入って来た銀時を止めることは出来ず、遼は「どうぞ」と家の中にあげた。
「あんまりお構いも出来ないけど」
「いやいや、急に押しかけたのはコッチだしな」
お茶とお茶菓子を用意しながら接待する遼に、銀時は努めて明るく接する。
その姿は交際していた頃のようで、自然と遼の表情も綻んだ。
暫く歓談をしていると、遼の携帯電話が着信を伝える。
銀時に断って席を離れた遼は、台所に行き電話をとった。
「もしもし、お待たせしました」
『いや、今大丈夫か?』
「はい。どうかしましたか?」
『ちょっとトラブってな。帰りが遅くなりそうなんだ。また連絡するが、戸締まりはきっちりな』
「はい。お仕事、頑張って下さいね」
電話が切れた後もにやけてしまいそうになる頬に手をやりながら、遼は携帯電話の画面を確認する。
【十四郎さん】と表示された画面を見る度に、胸が弾み、幸せを感じた。
浸っていると、名前を呼ばれて慌てて振り返る。
「遼」
「え、あ、銀ちゃん、ごめんね待たせて」
「いや。旦那から電話か?」
「うん。今日は遅くなりそうって」
「そっか。そりゃあ好都合だ」
銀時の目が妖しく光り、遼が気が付いた時には手首を掴まれていた。
「これ、何?」
遼の手首に巻かれた白い包帯。
銀時は遼が戸惑っているのを良いことに、するするとそれを解く。
その下に現れたのは、何かが巻き付いたような赤黒いあと。
瞬間、銀時の目が鋭く細められる。