第29章 支配される心と体(近藤・土方裏夢)
「まだ終わりじゃねぇぞ。中出しされる瞬間の顔、鏡でしっかり見てろよ」
「んやっ、そんなの、や──らあっ!」
土方に顎を掴まれた遼は、否応なしに鏡の方へ顔を向けられ、その姿に背筋を震わせた。
快楽に喘ぐ自分の表情以上に、押し迫る射精感に眉を寄せて顔を歪めた土方に見蕩れてしまい、痙攣していた膣に力がこもる。
「っあ、クソッ──!」
「ひっ、あ、またイくっ!~~~ああっ!!」
一際大きく絶頂を迎えた遼の中に、どくどくと土方の物が吐き出された。
その感覚すら遼に快感を与え、挿入されたままの物を搾り取るように吸い上げる。
たっぷり一分ほどの時間、二人は汗だくの体をぴったりとくっつけたまま、行為の余韻に浸っていたが、予告なく扉が開けられてそちらに顔を向けた。
入って来た人物は、二人の様子に苦笑しながら肩を竦める。
「遅いと思ったら、すっかり二人で楽しんでたのか」
「あー……悪ぃ、近藤さん、アンタが待ってるの忘れてた」
悪びれた様子もなく答えた土方は、見せつけるようにゆっくりと自身を引き抜いた。
抜け出る瞬間、遼の体がびくんと震えて二人の体液がどろりと零れ落ちる。
その様子に、近藤は「あっ!」と声をあげた。
「うおっ、何だよ急に」
「トシ、お前自分だけちゃっかりナマでやってるじゃないか!」
「……ここにゴム用意してなかったからな。それに俺は、アンタと違って病気は持ってねぇから」
「いやいやいや、俺だって病気は持ってないって。久しくナマでやってないし」
「アンタの場合、自分で弄りすぎなんだよ」
呆れた様子の土方は、器用に片手で身なりを整えると、ぐったりしている遼を横抱きに抱き上げる。
「遼ちゃん、少し休んで元気になったら四十八手に挑戦してみようね」
「え……?」
「普通の四十八手と裏四十八手っていうのがあるから、何日かかるかな」
随分と楽しそうな近藤の様子に、遼はごくりと喉を鳴らした。
体も心も、この先を期待して熱く疼いている事が、ただただ恐ろしい。
けれど、もう逃れられないのだと――
覚悟して、静かに目を閉じた。
≪おわり≫