第4章 執着(土方裏夢)
すっかり冷めた湯船につかって、遼はぼんやりと浴室の天井を見つめた。
どこもかしこも痛い。
赤く擦れた手首も、身体中の鬱血の跡も、彼を想う気持ちも。
長湯ですっかり冷えてしまい、シャワーを浴びるために浴槽を出てコックを捻った。
「何だ、まだ入ってたのか」
扉を開けて入ってきた人物に慌てるが、その手を掴まれ口吻られる。
「んっ、ふっ……」
「んっ、ちゅっ、はぁ……」
長い口吻に、意識を失ないそうになりながら、遼は必死で舌を絡め、求めるように体をすり寄せた。
「あんなにやったのに、物足りなかったのか?」
頷くとまた深く口吻られ、遼が状況に身を任せると、身体中を愛撫されて、またとろとろに溶かされる。
彼が休暇の日はこうして、意識を失うまで愛されるのが常になっていた。
夫婦ならば、有って当然の営みだ。
「っは、挿れるぞ」
「んっ、あぁっ……気持ちい、いっ!」
「俺もだ」
出しっぱなしのシャワーから降り注ぐ湯の音に混じって、パンパンと響く音があまりにも淫靡で、遼はきつく目を閉じた。
荒い息遣いがますます切羽詰まったものになり、二人の限界が近付く。
「愛してる」
その一言で、遼は短く悲鳴をあげて全身を震わせた。
殆ど間無しに、遼の中が満たされる。
「っ、あ……十四郎さん……んっ」
「んっ、遼」
繋がったまま、深く口づけて、二人は余韻に浸る。
土方が自身を抜くと、収まりきらなかった物がこぽりと溢れた。
「大丈夫か?」
「はい」
上気した頬を更に赤らめて頷く遼に、土方は「もう一回入り直しだな」と、湯船に熱い湯を足す。
「ほら、入るぞ」
二人で浴槽に入ると、土方は満足そうに遼を抱き寄せた。
「せっかくだから、どこかに出掛けるか?」
「十四郎さんが良ければ」
どちらともつかない回答に、土方は溜息を吐きつつ水面に浮かぶ遼の髪を掬い取る。
「暑くなるし、夏物でも見繕うか。ついでに飯でも食べに行くかな」
頷いた遼の項に軽く口づけると、土方は「先に出る」と言って浴室を後にした。
残された遼は栓を抜いて暫く湯が流れていくのを見つめ、やがて諦めたように浴室を出る。