第27章 朝雲暮雨【土方夢】
腕の中で穏やかな寝息を立てる遼の姿に、土方は知らず笑みを漏らした。
想いが通じ合い、漸く契りを交わしたのが昨夜。
「もうすぐ、朝か――」
そう呟いてすべらかな遼の頬を撫でると、幸福感に満たされた。
「んっ……」
身じろぎした遼に、慌てて手を離す。
「まだ起きねぇのか。にしても、良く寝るな。よっぽど疲れたのか?」
初めての行為だと知っていたので、土方は随分我慢――もとい、手加減をしたつもりだったのだが、こんこんと眠り続けるほどには疲労したらしい。
「まぁ、次からは慣れるだろ」
少し乱れた髪を梳きながら、遼が目覚めるのを待つ。何てことは無いその時間が、愛おしくてたまらなかった。
そんな事を考えていると、腕の中の遼がもぞもぞと動いて重い瞼をゆっくり開く。
「ん……、ん?」
「漸くお目覚めか?
何変な顔してるんだよ」
「え、いや、だって、どうして土方さんがここに?」
「どうして俺がここにって……お前、まだ寝ぼけてるな。
夕べ、何があったのか思い出せるか?」
ため息交じりに尋ねると、遼は数度瞬きした後、耳まで真っ赤になった。
「って、お前、わかりやす過ぎんだろ。真っ赤だぞ」
「だっ、なっ!!」
揶揄うような土方に、状況を理解した遼は慌てて布団を引き寄せる。
「布団取んなよ。寒ぃだろうが。俺だって裸なんだから」
「ふっ、服を着てくださいっ」
「お前なぁ……俺の裸なんざ昨日さんざん見ただろ」
「~~っ!」
「うわっ、何すんだ!枕投げんな!
ったく、目が覚めたらいつも通りに戻りやがって。昨日みたいな態度なら、可愛げもあるってのになァ」
呆れたように溜息をついた土方を睨みつけながら、遼は「どういう意味ですか?」と尋ねた。
遼の素直な反応に、土方は身を起こして寝間着に袖を通しつつ肩を竦める。
「覚えてねぇのか?」
「覚えてません。というか、私に可愛げなんて求めないで下さい」
拗ねたように顔を背けた遼に、土方はやれやれと溜息をついた。
昨夜の行為の間、何度も甘えたように縋って来たのは夢だったのかと思ってしまう。
戸惑いながらも伸ばされた腕や、初めての行為に震えながら応じていた声。記憶や感触だけではなく、細胞全てが昨夜の行為を覚えている。