第17章 企画【〇〇しないと出られない部屋】
そう言って、高杉は最後の逃げ道を用意しながら、まるで「逃がさない」というように、優しく遼の頭を撫でる。
「晋ちゃんから、逃げたりできないよ」
「そうか」
薄く笑った高杉は、もう一度口吻すると、遼の帯を解いてベッドに寝かせた。
数度瞬きした遼は、自分を見下ろす高杉に両手を伸ばす。
「ね、晋ちゃん。ぎゅってして」
「ガキの頼み事みてぇだな」
「どう言ったらいいの?」
「いや、遼はそれでいい」
遼の背中に手を回した高杉は、まるで壊れ物を扱うようにそっと遼を抱き寄せた。
その優しさに遼が浸ろうとしていると、ガチャリという音と共に扉が開く。
急に現実に引き戻された二人は、手を離してそちらを見た。
「えっ、何で扉が……?」
「……ちっ」
高杉は露骨に不機嫌になり、開いた扉を睨みつける。
「晋ちゃん、あの……開いたけど」
「そうだな」
「えっと、脱出する?」
遠慮がちに尋ねる遼に、高杉は随分と優しい口調で「どうしたいんだ」と問いを返した。
「私は……」
遼は少し悩んだ後、僅かに震える声で答える。
「晋ちゃんと、もう少し一緒に居たい」
それに満足したのか、高杉の手が遼の頰を優しく包んだ。
「俺もだ」
再び重なった唇に、遼は全てを委ねるように高杉をそっと抱きしめた。
このまま溶け合って、ひとつになってしまえたらいいのにと、叶わぬ願いを抱きながら───
「お願い、晋ちゃん……もう一度、ぎゅってして」
「何度でも、してやる」
触れあった肌の熱さを、忘れないように。
何度も。
何度でも。