第17章 企画【〇〇しないと出られない部屋】
土方ver.
1週間前と全く同じ状況に、遼はその場に立ち尽くした。
正しくは、一点のみ異なっている。
遼の隣に立っているのは、近藤では無く、直属の上司である土方だった。
(近藤さんはともかく副長にハグは……)
モニターを睨みつけて頭を抱える遼の姿に、土方はひっそりと傷付いていた。
そんなに嫌なのか、と。
「おい、神武……」
「はっ、はいっ!」
名前を呼ばれただけで過剰にびくつく遼に、土方は伸ばしかけた手をゆっくりと降ろした。
「ふ、副長、何でしょうか?」
「いや、何でもねぇ。取り敢えず、出口を探すぞ」
そう言って煙草に火を点けた土方にほっとしつつ、遼は部屋中を探索するが、案の定脱出出来るような場所は見つからず、肩を落とす。
(やっぱり指示に従わないと出られないのかなぁ)
頭の中でぐるぐると、先日近藤に釘を刺された言葉が巡っていて、ますます頭が痛くなった。
(そもそも副長には、女として見られてないだろうから、別にハグくらい構わないような気はするんだけど……)
何故か、近藤の時のように躊躇わずに抱きつく気が起きない。寧ろ、妙に意識してしまい、自分から言い出せなくなっていた。
ちらりと土方に目をやると、ベッドの縁に腰掛けて優雅に煙草をふかしている。
(何あの余裕?私だけ焦って馬鹿みたいじゃない!)
むくむくと湧いてきた怒りに任せ、遼は土方の隣に腰掛けた。
突然の事に、土方は驚きつつも煙草を消して遼の様子を窺う。
真剣な眼差しは、どこか追い詰められているようでもあり、入隊試験で対峙した時を思い出して息を飲んだ。
「神武、どうかしたか?」
「副長、失礼しますっ!!」
意を決した遼が勢いをつけて抱き付いたせいで、そのまま二人はベッドに倒れ込む。
「すっ、すみません!」
図らずも押し倒してしまった遼は、慌てて体を起こして土方から離れた。
「あれ?
開かない……何で??」
前回のように扉が開く音がせず、遼は不安げにモニターを見上げるが、変わらずに指示を表示している。
「今のじゃ駄目だったの?」
打ち拉がれながらも、遼は近藤との違いを必死で思い出す。
何が駄目なのか。何が足らないのか。