第16章 企画(沖田・新八夢)
「新八と、何かあったか?」
「──っ!」
「いやー、青春だねぇ」
「銀ちゃんのバカっ!揶揄わないでよ!」
にやにやと笑う銀時をバシバシと殴りながら、遼はこっそり新八の様子を窺う。
さっきの今で、新八も照れくさいのか申し訳ないのか、銀時と遼から目を背け、神楽と話し込んでいた。
その姿に、遼は淡い期待を抱いてしまう。
(私だけ、意識してるわけじゃないよね?)
「熱烈だねぇ」
「なっ、何が?!」
「新八の事見つめてただろ」
「み、見てる方向に居ただけだよっ」
「へぇ~、見てる方向にねぇ」
まるで子どもの頃のようにふて腐れる遼が懐かしく、銀時がますます揶いの言葉を向けていると、いつの間にか傍に来ていた新八に声を掛けられた。
「銀さん、それくらいにしないと嫌われますよ」
「へいへい、ナイトが来たからこの位にしとくか。じゃあな、遼。神楽ぁー、帰るぞー」
「おうネ!」
手を振って去って行く二人を見送って、遼ははたと隣に立つ新八に気付いてそちらを向く。
「新八くんは一緒に帰らなくていいの?」
「……多分、気を遣ってくれたんだと思います」
苦笑いする新八に首を傾げると、「さっきはすみませんでした」と、頭を下げられた。
「えっ、あ、あの」
「わざとじゃないとは言え、色々とすみませんでした」
「わっ、あ、頭上げて。びっくりしたけど、別に怒ってはないから」
「え?」
「私は別に、嫌じゃなかったから……」
耳を澄ませていないと殆ど掻き消えてしまいそうな遼の言葉に、新八はズレた眼鏡をなおすのも忘れて呆然と立ち尽くす。
ぽかんと口を開けたまま固まってしまった新八に、遼は思わずくすりと笑った。
「嫌じゃなかったから、だから……またこうやってみんなで遊べるといいね」
はにかむような遼の笑顔に、新八は「そうですね」と頷き、にこりと笑った。
──おわり──