第3章 アイの無い形(真選組逆ハーギャグ)
ある日の午後、報告書を作成していた遼のもとに沖田が一枚の記事を持ってやって来る。
それは、先日吉原で起こった一件についてのスクラップだった。
「愛染香?」
「ああ、嗅ぐとたちまちどんなに嫌いな奴でも好きになる、魔性の惚れ薬だとよ」
「へぇ、難儀な薬ですね」
「どうやらそれが、まだ残ってたらしい」
「へぇ、大変ですね」
「何でィ他人事みてぇに」
「は?」
聞き捨てならない一言に、遼は筆を止めて沖田を見る。
例のあの、何かしら悪意を感じさせる笑顔と目が合い、遼は咄嗟に逃げだそうとするが、沖田に襟首を掴まれ引きずり倒される。
「ぐえぇっ」
「潰れた蛙みてェな声出しやがって、もうちょっと色気ってもんを身に付けろィ」
「この状態の色気って何ですか?」
畳にひっくり返ったまま尋ねるが、別に答えが返ってくるわけではない。
「いつまでもひっくり返ってねぇで行くぞ」
「ど、どこにです?」
「地獄の一丁目」
ぐっ、と親指を立てられ絶望した。
(今回は、何丁目まであるんだろう?)
諦めて立ち上がり、沖田の後をついて行くと、局長室に入るよう言われる。
「失礼しやーす」
「失礼します。神武遼です」
沖田に続いて入ると、中には近藤だけでなく、土方と山崎、原田に斉藤まで居た。
「おお、呼び立てて悪かったな。まあ、座ってくれ」