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魂の色【銀魂短編夢】

第15章 失われた日々(銀時裏夢)→(土方夢)


「どうかしましたか?」
『総悟!テメっ、とっとと返せ!!』
『まだ話し中ですぜ。そんなに遼と話してぇんですか、土方さん?』

出てきた名前に、思わず息を飲む。
心臓が跳ねる音が耳の奥で聞こえて、着物の袷をぎゅっと掴んだ。

「あの……沖田さん、大丈夫ですか?」
『土方さんが恥ずかしくて遼に電話出来ねぇってから掛けたのに、そりゃあねぇや。遼、土方さんはどうやらアンタと付き合う気らしいぜぃ』

返ってきたのは意外な応えに、危うく電話を落としそうになる。
沖田さんの事だから揶揄っているのだろうと思いながらも、携帯電話を握る手が震えていた。

「えっと、あの……」
『じゃ、後はパス』
『総悟、テメェ投げるなっ!
──クソッ、逃げやがった。あー、その……神武か?』
「はっ、はいっ!」
『ふっ、随分元気がいい返事だな』

土方さんの笑い声が聞こえて、私はぐっと体温が上昇したような気がして、頬に手を当てる。
顔が熱いのも、掌がしっとりと汗をかいているのも失態のせいだと言い訳して、何とか返す言葉を探した。

「──っ、あ、あのっ、その、伯母から話を聞いて、それから、あの、土方さんが」
『ちょっと落ち着け。話は聞いたんだな。で、次はいつにする?』
「えっ?!だって、断るって──」
『俺は承諾した覚えはねぇぜ』
「そんな」

てっきりこれで終わりだと思っていたので、この状況は想定外だった。

『勿論、お前にその気が無いのは知ってるから、断るなら今の内だ。ま、適当に話をつけておいてやるよ』

優しい声に、胸が痛む。
けれどそれ以上に、湧き上がるこの想いは──

「いえ、こちらこそ宜しくお願いします。お会い出来るのを、楽しみにしていますから」
『……そうか。じゃあ、次の休みにな。いつなら空いてるかわかるか?』
「はい。ちょっと待って下さい」

慌てて手帳を開きながら、私は新しい日常への一歩を踏み出したような気がしていた。
これは別に、過去との決別ではない。
ただ、あの人に恋した日々はもう戻らないのだと、ようやく受け入れられた。
予定を決め、電話が終わると早速土方さんの番号をメモして登録する。
少し震えた文字が恋の始まりのように思えて、番号をそっと指でなぞった。





──おわり──
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