第14章 募る想い(土方裏夢)
賑やかな声が聞こえてきて、遼は重い瞼をゆっくり開く。
(何か明るい……今、何時?)
首だけ動かして時計を見て、遼は硬直した。
(十一時!?えっ、もうお昼!?)
驚いた遼は体を起こそうとして失敗する。
腰に回された腕が思ったよりもしっかり固められていて、体をずらしても外れそうになかった。
どうしようかと悩んでいると、「起きたのか」と声を掛けられる。
「ぁ……んっ」
声を出そうとするが掠れてしまい、遼は軽く咳払いをした。
どうやら喉がからからに渇いているようで、うまく声にならずに眉を顰める。
「ちょっと待ってろ」
立ち上がって居なくなったその姿に、遼はある事に気が付いてゆっくり身を起こした。
間もなく戻ってきた彼の手から水の注がれたコップを受け取ると、ごくごくと一気に飲み干す。
口の端から零れた水を指で拭き取ると、目の前の人物の名前を呼んだ。
「十四郎さん……」
「ん、どうした?」
向けられた微笑みに、遼は涙が溢れるのを止められず、魘されるように何度も名前を呼ぶ。
「とう、しろうさ……十四郎さん、っ」
「目ぇ擦ったら、赤くなるぞ。ほら、俺はここに居るから泣き止め」
抱き寄せられ、遼は土方の胸に顔を埋めてしゃくり上げた。
背中を撫でる優しい手も、宥めるようなその声も全てが愛しくて、遼は甘えるように体を擦り寄せる。
その仕草に、土方は「はあっ」と大きな溜息をついた。
「十四郎さん?」
「あのな、これでも結構我慢してるんだから、あんまり可愛いことするなよ」
意味がわからず土方を見上げると、不意打ちに口吻られる。
「とりあえず、風呂にでも入るか」
「は、」
頷こうとした瞬間、遼の腹が空腹を訴えるように「ぐうっ」と鳴った。
その音に、土方は思わず吹き出す。
「ふっ、──そう言やぁ、朝も喰ってなかったな。飯は作ってやるから、風呂に入って来い」
「っ──すみません」
耳まで真っ赤にして俯く遼の頭を撫でて、土方はもう一度遼に口吻た。
──終──