第2章 鉄線(沖田裏夢)
「喉が渇いたら、水が欲しいだろ?」
沖田の真意がわからず、遼は首を傾げた。
「同じなんでィ」
「何の話ですか?」
この時は、何気なく聞き返した自分を「愚か」なんて思う日がくるなんて思ってもいなかった。
暗く湿った部屋に閉じ込められた遼は、寝台に転がったままぼんやりと考える。
拘束されているわけでも衰弱しているわけでもないが、体が怠くて動かない。
本当は、思考を巡らす事さえ億劫だった。
カチャリと音がして、扉が開かれる。
「気分はどうでィ」
「最悪、です」
「だろうな。あんだけ薬飲んで平静だったら化物だ」
悪びれた風もなくそういうと、沖田は遼を引き起こしてその頬を叩く。
「っ!」
「痛みは感じるみたいだな。じゃあ十分か」
意図がわからず睨みつけると、沖田は自分のスカーフを外して遼の手首を縛り上げた。
「今日も楽しむとするか。裏切り者の神武遼」
「私は、裏切ってなんて……!」
「俺とシておいて、よくそんな事がいえるねェ」
呆れたように溜息をつく沖田に、遼の顔が歪む。
何とか言葉にして反論しようとするが、脳裏に浮かぶ大切な人の笑顔がそれを邪魔する。
震える唇を引き結ぶと、沖田が満足そうに笑った。
「裏切り者には、まず奉仕でもしてもらいやしょうかねェ」
沖田の要求に、遼は今にも泣き出しそうな目で睨みつける。
「その反抗的な目、ゾクゾクするぜィ」
沖田は怯える遼を床に引きずり落とし、寝台を背もたれに座らせると、自身を取り出して震える唇に先端を押し付けた。
「ホラ、咥えろよ」
「……」
顔を背ける遼に苛立った沖田は、髪を掴んで無理矢理顔を上げさせる。
「往生際が悪ぃな」
沖田は冷ややかな目で遼を見下ろすと、鼻をつまみ、呼吸を止めさせた。
「っ…ぷはっ!
…んぐぅっ」
「ちゃんと咥えられるじゃねぇか」
無理矢理自身を押し込んだ沖田は、遼の髪を撫でながら「歯ァ立てんなよ」と、警告する。
「んっ、ぅうっ」
「ちゃんと舌を使って奉仕しろよ」
沖田が逃げようとする遼の頭をしっかりと押さえ腰を前後させると、喉の奥にあたり、苦しそうな表情で短くえずいた。