第7章 護身術
一方では――――
「くそ!聞いてねぇぞ!何なんだよあの女どもはよぉ!」
「なんだよ、失敗したのかよお前ら」
「くそ、さすが静雄の女ってだけはあるつーかよぉ……なんなんだよあいつら!」
「まあいいじゃねぇか。あのスタンガン持ってた女なら、一人の時を襲えば何とかなるだろーよ」
「見張りを現場に残したし、次は一人ずつ確実に攫えるってわけだ」
「見張りってのは、こいつらか?」
ドチャリ、と音がしてたまり場の入口に二つの肉塊が投げ出される。
「なんだぁ!てめぇ……ら……。……え?」
現れたのは十人を超える強面の男達。
黒スーツやジャージ、作業服など、様々な格好をしているが、一目で“その道の本職”と解る、不気味な威圧感を持っていた。
「で、誰を攫うって?」
「あ、え……?」
「お嬢に手を出すたぁねぇ……。そんなに熔鉱炉で鉄と混ざりたいのか?あ?そんなに鉄人になりたいなら、俺らが手伝ってやろうか?なぁ」
「……お前、絶対ぇ私情出てるだろ、そのキレ方」
「だってよー、あのお嬢をだぜ?俺らの可愛い天使を攫おうなんて糞野郎にはそれなりの事しねぇと気がすまねぇ」
「……まあ確かに、うちの会の者は皆、お嬢の事を好きすぎるからなぁ」
「へ……?へ……!?」
「ちょっ……待って……何がなんだか……俺ら、ほら、静雄を……ね?」
「はいはい。話はとりあえず事務所で聞くから。言い訳を考えといて」
「ま、まって……」
「言い訳がつまらないとさぁ、遺言を考えるハメになっちゃうよ?まあ、そうなったらだれにもその遺言は伝わらないんだけどさ」
こうして――
噂話は、一つのチームを確実に壊滅へと追いやった。