第6章 相談
は再び首を振るが、それは逃避の為の否定ではなかった。
「私は、解らないんです。みんなに、嘘をつかれてきたから……信じられないんです。赤林さんも、信じられる人かどうか解らない……」
「……」
「だから、私はあの人がいい人だって信じたいけれど、そんな自分も信じきれなくて……」
は泣きそうな顔になって俯くが、それでも言葉だけは吐き出し続ける。
「でも、強くなきゃ、ダメなんです」
「どうしてだい?」
「仮にその人が悪い人だったとして、私が弱かったら殺されちゃうだけから。だけど、父達にも相談できない。父達は、その……ヤクザなんですよね?そしたら、その人がいい人か悪い人か解る前に殺しちゃうと思うから……」
「……驚いたねぇ。きょう日の高校生は,みんな嬢ちゃんみたいに大人びた考えかたなのかい?」
心底感嘆するように呟いた赤林は、しばらく考え込んだ後、ヘラリと笑いながら呟いた。
「ま、解るっちゃ解るよ。もし本当に相手が悪かった場合、止めるにしろなんにしろ、まずはそいつより強くなきゃ話にもならねえからねえ。それに譲ちゃんはその齢で……ま、おいちゃん達も白黒ハッキリする前に人を殺しちまう程に短気じゃねぇと思いたいけど……」
自虐的に肩を竦めつつ、赤林はに一つの提案を持ちかけた。
「まあ、あれだよ。別にね、殺し屋とかが相手だからってこっちも“殺し合い”が強くなきゃいけないっていう決まりはないんだよ」
「えっ?」
「護身術っていうんだけどねぇ。悪い人を殺したりするんじゃなくて、自分や、ちゃんの大事な人を守る為に強くなるっていう方法もあるんだよ」