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とある、非日常の中の少女の日常。

第6章 相談


―5月5日・朝・粟楠幹彌邸―

池袋からやや離れた所にある立派な邸宅。

その中に足を踏み入れると――

トタトタという可愛らしい音を響かせながら、一人の少女が赤林の元に駆け寄ってきた。

「赤林のおじさん!」

「おお、お嬢。久し振りだなぁ」

赤林が顔を出すのは、実に数年ぶりとなる。

粟楠が中学生になった時、親の職業を知らせずにおきたいという幹也の意を汲んで、なるべく顔を出さないようにしていたのだ。

「……で、おいちゃんに何か用があるんだって?」

「はい!」

目を輝かせながら彼の腕をクイ、と軽く引っ張った。

「赤林のおじさんと二人で話があるの。部屋に来てもらってもいいですか?」

「こら、……」

「ああ、いいんすよ専務。私は構いませんやね」

自分の部屋へと行ってしまったの後を追おうとする赤林の腕を今度は幹彌がグイ、と掴む。

「言っておくが、変なことは吹き込むなよ」

「解ってますって」

「手も出すんじゃねぇぞ」

「……幹彌さん、自分の娘がいくら可愛いからって……そりゃねぇや、そりゃねぇっすわ」

「いや……悪いな。どうかしてた。すまん」

「ああ、別にいいっすよ。俺には女房も情婦もいませんからねぇ、ハハ」

気にした素振りも見せず、幹彌をその場に残して彼が部屋に入ると同時に、は真剣な顔で呟いた。

「あの、この相談は父にも母にも内緒にしてほしいんです」

「はいはい。解ってるよ」

少女を安心させるように、身を低くかがめながら笑う赤林。

そんな粟楠会の幹部に向かって――

「えっと、あの……その……」

は、とんでもない言葉を口にした。

「どうすれば……“殺し合い”に強くなれますか?」

珍しく冷や汗を掻きながら、しかし、ヘラリとした笑顔は崩す事のないままに、赤林は思う。


――参ったね、こりゃ。

――こいつぁ……『様子がおかしい』どころの話じゃなさそうだねぇ。
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