第5章 救出
「一旦車を停めることを要求します、スローン。初弾は躱されました。予想以上の瞬発力です」
『解った』
「……?」
今、ヴァローナはスローンの声に交じって妙な音を聞いた気がした。
ーー気のせい……?
と、次の瞬間ーー駐車場の影から巨大な『何か』が道路に転がってきた。
「……Uto?(……え?)」
『おい……ヴァローナ、なんだアレは!?』
「……車の発進を要求します。早急にです!」
『わ、解った』
西部劇のOPなどで転がっているタンブル・ウィード。
それを巨大化したような調子で転がる――一台の乗用車。
その光景を見た通行人や近所の住人は、後に語る。
『金髪のバーテンダーが廃車をサッカーボールのように蹴り転がしていた』と。
一瞬、転がった車と駐車場の間に影が走る。
慌てて引き金を絞るが、その前に車が飛んできた。
「っっっ!」
派手の音を響かせて、ガラゴロと巨大な質量がトラックの後ろに転がった。
車の後ろにいると思われたバーテンダーの姿が消えている。
ーー車は……目眩ましか!