第1章 出会い
ー5月3日・池袋サンシャイン60通りー
お昼過ぎのこの時間、飲食店の混沌の中で二人の男が目立っていた。
一人はドレッドヘアーの男。もう一人はあの有名な自動喧嘩人形、平和島静雄なのだから仕方がない。
「さて、昼飯はロッテリアだったからよ、夜はバランスとってマックに……あん?」
「どうしたんすか?」
「いや、後ろ」
「?後ろがどう……」
店のガラスの外側にいたのは、一人の少女。
ガラスに穴が開くのでは、と思うほど静雄のことを凝視している。
「……?」
少女はやがて、手に持っていた一枚の紙片とバーテン服の青年を交互に見てーー
ぱあっ、と花が咲くように笑った。
「……ありゃ、静雄の知り合いか?」
「……いや、心当たりは無いすけど」
「でも、お前の服が珍しいから見てたって感じじゃねぇぞ」
「ですよねえ。ちょっと出てみます」
「おいおい、行くのかよ。突然『パパ!』だの『ダーリン!』だの言われたらどーすんだ?」
「あり得ないっすよ。遊馬崎の妄想じゃあるまいし」
トレイなどを片付け、そのまま外に出るとーー
肩の辺りまである黒髪を揺らめかせ、少女は真っ直ぐに静雄を見つめ、なんの迷いもなく駆け寄ってくる。
(ーーなんか、嫌な予感がする)
彼の予感は少女から放たれた言葉によって的中することになった。
「死んじゃえ」
そして少女はーー
手にした改造スタンガンを静雄の腹部へと押し当てた。