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とある、非日常の中の少女の日常。

第3章 影


「やあセルティ!お帰り!良かった、無事だったんだね!ちゃんも無事でよかった。大丈夫かい、何処か怪我とかしなかったかい?」

「大丈夫です。ありがとうございます、岸谷先生」

先刻までの怯えた表情とは一転し、柔らかく微笑む。

ーーええッ!?なんでこの子、新羅にこんなに懐いてるの!?

「そっか、良かったよ。ああ、今、お茶を入れてあげるね」

ーーま、まさか新羅、ロリコンの気が……!

新羅がキッチンに行くのと入れ替わりに四木が姿を現した。

「お嬢さん、ご無事で何よりです」

「!」

「家出した時はどうなる事かと思いましたが……とにかく、怪我がないようで良かった。なにも危ない目にはあいませんでしたか」

「……すみません」

「その言葉は、まずご両親に言ってあげて下さい。今、連絡しますから」

「……お、怒らないんですか?」

「まず、お嬢さんを怒るのはご両親の役目です。私の小言はそのあとでたっぷりと言いますから、今はとりあえず無事を喜ばせて下さい」



―数分後―

「……お父さん」

「!」

粟楠幹彌(みきや)は膝をつき、娘の震えを止めるように肩を手で抱く。

「お前が俺や爺ちゃんの事を嫌うのはいい。だが、母さんだけには心配をかけるな」

「ごめんなさい……ごめんなさい……!お父さんも無事で良かった……!」

ーー……“お父さんも無事で良かった”……?

四木に違和感が膨れ上がったその瞬間、何か小さな塊が、道路の方から飛んできた。

「っっっ!?」

“それ”は激しい閃光を放ち――周囲にいた全ての人間の視覚と聴覚を狂わせた。

閃光手榴弾。

幹彌の目の前に突然現れたバイクから降りた大柄な男がの腕を掴み、自分から剥がそうとする。

「テメェ!」

ライダーは幹也の襟首を掴み、片手だけで持ち上げ、そのまま力任せにから引き剥がし、幹也の乗ってきた黒塗りの車へと投げつけた。

「がっ……」

背中から車の側面に叩きつけられたが、それでも彼は立ち上がり、暴漢に顔を向けたのだが――

暴漢はすでにを抱えてバイクに跨っており、悠々と走り去ってしまった。
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