第1章 記憶と感覚

『……っ、頭、痛っ…』

酷い頭痛に寝覚めの悪さを感じ頭を抑え上半身を起こした。
辺りを見回すと確かに自分の部屋で自分のベッドであるはずなのに…一部の壁に違和感を感じた。

は気怠げにベッドから起き上がり違和感の前に立つと、そこにはショーケースのように重厚なガラスケースが8個並んでいた。
その中には拳銃やライフルなど武器が丁重に収納されていた。

『…何、…これ？』

ガラスケースですら身に覚えがなく武器など以ての外だった。
暫く顎に親指を唇に人差し指あてケースを眺めてみるも頭痛が激しくなるばかりで、キャビネットからピルケースを取り出した。
そこでもまた身に覚えのない薬が数種類あり、ボルタレンを手にキッチンへ向かい薬を飲んだ。

『…っ、頭痛い、何なのもう…』

状況を把握するために家の中の探索をはじめた。
あらかた違和感もなく安堵した。　
ウォークインクローゼットを開けるとキャットスーツやレザーのスーツに身体のラインが出る服が多く、かろうじて普段着と言そうな物が数着詰まっていた。

『…こんなの、誰か着れるの…』

シューズケースもピンヒールやブーツなどで埋め尽くされていた。

『………』

はあまりにも奇想天外な状況に背を向けシャワーを浴びにバスルームへ向かった。
レストルームに足を入れると大きなドレッサーがある。
鏡に映ったものに驚き後ろへ飛び退きドンッと尻もちをついた。　

『ひッッッ！？』

目覚めてから1番驚いたそれは自分であろう姿。
今一度、鏡の前に立った。
顔に手をあて、頬を抓り、髪を引っ張り、一糸纏わぬ身体に触れ確かめた。

『感覚は確かにある、痛覚もあるから…これが私？』

淡いミルクティー色の髪の毛、メラニンとは無関係な白い肌、血色の良い唇、菫色のアーモンドアイ…そしてクローゼットに入っていた服の似合いそうなスタイル。　

そう…、言ってしまえば美人でスタイルも良かったのだった。

しかしふと思う、これが私と言ったものの…これ以外の私も知らない…？

部屋はわかるのに自分の事が一切わからず、漠然とした違和感だけが残っていた。