第1章 何処にいても【潑春】
「あ、…ひまり、またサボってる」
目を開けると私を覗き込む整った顔と、太陽の光でキラキラと光る真っ白の髪。
何処にいても彼はいつもわたしを見つける。
初めて彼に会ったのは私が高2になったばかりの春。
お昼を食べたら眠くなって、屋上でお昼寝と言う名のサボりをしていた時。
目が覚めると彼が隣で寝ていた。
新入生に白髪の超絶イケメンと金髪のハーフ美男子が入ってきたって噂になってたから、その髪色を見て、噂の白髪か。とすぐに分かった。
彼もサボる系生徒か。もうこの場所はダメだなぁ。と思いながら寝ている彼を起こさないように、そっとその場を後にした。
そして別の日、今度は中庭の死角になっている場所でお昼寝をしていると、また目が覚めたら彼が隣に寝ていた。
私は驚きと同時に腹が立った。
何がしたいんだ。この子は…と。
その日も起こさないようにその場を立ち去った。
初めて話をしたのはその次に会った時。
この場所は流石に見つからないだろう。と屋上の塔屋でお昼寝。
目が覚めると、やっぱり彼は隣にいた。
今度は寝ずに片膝を立てて座っていた白髪の彼。
起きた私を見て「おはよう」と気の抜けた声でチラリとこちらを見る。
なんでいるの。ほんとに何がしたいの。
なに涼しい顔しておはようって言ってるの。
腹が立って目を細めて睨みつけていると、彼が私の顔をマジマジと見始める。
だから、なん…
「やっぱり…可愛かった」
彼の言葉の意味が分からなくて何度か瞬きをした。
その後、身体中の熱が一気に顔に集まってくる。
言葉の意味を理解したから。
「な、な、なっ……!」
こういう言葉を投げかけられるのには慣れていない。
何となく他人と馴染めず、1人でいることが多かったから。
まさか他人に…ましてや男の子にこんな事を面と向かって言われる日が来るなんて夢にも思わなかった。
「草摩潑春」
「へっ?」
顔を真っ赤にして目を見開いていると急に名乗り出す草摩潑春くん。
草摩って…どこかで…?
「俺の名前、覚えてて」
彼は自分の名前を告げると、私の名前を聞くこともせずに塔屋から飛び降り屋上から出て行った。