第3章 初対面
「あ、あの。そろそろ寝ますので…今日のところは、お引き取りを…」
「あれ?そうでしたか。てっきり"今日も"寝ないんだなって思ってたんで来たんですけど…」
「!」
対面してから驚かされてばかりだ。
知っているという事実に恐れおののき、若干身を引くと彼はあ、と声を出して両手を横に振った。
「今日から身の回りの管理と任務を与えられたのですが、少し前まで怪しい動きが無いか監視役に任命されていたので、別に他意はないですよ」
「監視…」
自分には重苦しい言葉だった。
どこからともなく現れた異世界人をこの組織は怪しまないわけがないだろう。ましてや戦争をしている世界で、敵のスパイかと疑うのは正常な行動だ。
正論である。だが、落ち込まずにはいられなかった。
徐に振り返り、自分に与えられた部屋を見渡す。
「…この部屋に監視カメラとかあるんですか?」
「いえ。普通の部屋です」
「だったら何で寝ないってわかったんですか?」
「え、いつも表情酷いじゃないですか」
人差し指で指された目尻に目を見開く。
今は深夜である故にそういう表情はできないが、この扉を越えれば笑顔を忘れなかった。元気である証拠を出すために楽観的に振る舞っていたのに、気付かれていた。
「俺、射撃担当なんで、目はいいんですよ」
なるほど、納得した。
深く息を吐いて横の壁に凭れ掛かると、一気に力が抜けて膝から折れてしゃがみ込んでしまった。