第8章 全てを見透かしていた者
「自分のしたことに不快感を与えてしまったから。ちょっとでも印象を良くしようとしてね」
「…今は、そうじゃないんだね」
「しないで大丈夫、って言われちゃったから。すると気も楽になったんだよね。ロドスに許された感じがした」
「それは、良かった」
「…クーリエは、その…失礼だけどさ、疲れない?ずっと笑ってると顔が固定された感じがする」
「職業柄こうしないといけなくてね。…でも、誰かに作り笑顔だとバレたのは初めてだな…」
クーリエは自分の顔を触り、無表情になった。
すると、途端に愛嬌のある顔が凛々しく見えて私は思わず笑ってしまった。
「笑顔もかっこいいけど、何か笑ってないのも新鮮で良いなぁ。流石…この世界イケメン多い」
「!…さくら…それは、素で言っているのかい?」
「?うん。通常営業。この世界にいる間は楽しんでおかないとね!眼福!」
「…君の言葉は真っ直ぐに届くね」
「!」
その時のふにゃりと笑いかけたクーリエの笑顔は偽りがなかった。その美貌に頭を抱えて目を見開いた。
「イケメンだ…!」
「はは、ありがとう」
「流石に彼女いるでしょ!?」
「いないよ」
「くっ…何故この世界の美男美女には恋人がいないんだっ…!」
「…そんなさくらにはいるのかい?」
「いないよー!」
「…そっか。…あ、ここだよ。トレーニングルーム」
そう言ってクーリエはトレーニングルームと書かれた壁掛けの看板の下に付けられてある使用の有無を示す看板を使用中に変えた。