第17章 深い謝罪と感謝
「ドクター。さくらです」
「どうぞ」
中から聞こえた了承の声に、ドアノブを握って押した。
「失礼します」
中に入るのは初めてじゃない。だが、ここはオペレーターが心地いいところだと言うように、私もこの空間が好きだ。ドクターはその空間で、やはり書類仕事をしていた。
忙しいだろうに、書類から顔を上げて私をフードの中から見据える。
「あぁ、よく似合ってるじゃないか」
「はは。お金出してもらって、ありがとうございます」
頭を下げるとドクターは立ち上がり、私の前まで歩いて来た。
「いや。さくらがこのロドスに与える影響から換算しても安いものだ。…本当に助かっている。ありがとう」
すると、今度はドクターが頭を下げ始める。そんなことをされる謂れはない、とすぐに頭を上げるように言う。
「!いえ…この世界に来た時に神様から与えられたものだと思うので…私は、何も」
「はは、まぁ鉱石病を治す能力と源石術の力はそうだが…私は最初、君をロドスで保護しようと思ったのはその人柄の良さなんだぞ?」
「人柄…」
「君は周囲を明るくしてくれる。それだけでロドスには大きな影響があるんだ。メランサが良い例だろう。あの子は君が来る前より明るく楽しそうにやっている」
「…素直に嬉しいです」
そう言うとドクターは背を向け、本棚に手をつくとまるで昔話をするように言い始める。
「本当はレユニオンの疑いもあるから追い出せという声が多かった。…私とアーミヤだけが保護を掲げていたんだ。だが君が1日、2日…ロドスで暮らしているとオペレーターたちの顔色が明るいものに変わって行った。そして、会議の結果、保護が決まったんだ」
「そんなことが…」
ドクターは本棚から視線を外し、私を真っ直ぐに見た。
「だから、特殊な力があるから受け入れたんじゃない。君自身の良さで受け入れたんだ。…自信を持つと良い」
「ドクター。…ありがとうございます」
もう一度深く頭を下げた。
すると、ポンと肩に手が乗り、頭を上げる。フードの暗闇の中で青い目が優しく笑った。
オペレーターたちが彼について行く理由がよくわかる。…彼には威厳があり、それでいて思慮深い。とても良い人だ。