第8章 それが愛だとしても
前とは違う自分の生活にもなかなか慣れてきたころ、
廊下ですれ違った生徒の会話に耳を疑った。
「西堂愛衣って知ってる?ジサツしたんだって」
「昔うちと同じ小学校だった子じゃん!嘘、信じらんない…」
「それ本当なの!?」
「わっ、つ、月島くん!?」
「ビックリしたあ~…え、もしかして知り合いとかだった…?」
「………っ」
「あ……、うちら不謹慎だったよね…その、本当にごめんね…」
「いや…それって何で知ってるの?」
「うちの彼氏、隣町に住んでるからさ…ビルから飛び降りる人がいて、それが西堂さんだったって・・・」
死んだ?愛衣が?
「…こっちこそいきなりごめん。教えてくれてありがとう」
「う、ううん・・・じゃあね・・・」
《私が死んだら》
《泣いてくれる?》
「本気にするとか、バカじゃないのッ…!」
涙が約束を守るように滲んで視界を奪った。
今更になって気付く。
君が逝ってしまう前に、もっと激しく、もっと長く君と手をつないで、抱きしめて離さずにいるべきだった。
君に寄り添った肩にぬくもりがよみがえる。
こんなことって、ないだろ。