第8章 それが愛だとしても
愛衣side
月島くんを好きだと思ったのは、私に声をかけてくれたその時から今までずっと。
居場所がない私に、彼は手を差し伸べてくれた。
たとえそれが私だけの思い違いだとしても、少なくとも私にとってはそうだった。
だから、あの時彼を見つけて、あふれる思いをどう処理したらいいのかわからなくて。
気付けば、私は彼の目の前で、涙が枯れそうなくらい、たくさん泣いた。
泣いて、泣いて、それでも足りなくて、長い腕に抱きしめられて、また泣いて。
こんなにあたたかいのは、いつぶりだろうか。
・・・・・
きっと、愛なんかじゃない。
彼を知らないからこそ、彼を忘れられなかった。
だから、このままでいい。
未完成の気持ちを、そのまま閉じ込めるの。
ごめんは、言わない約束だね。
私は今、満たされているわ。
『ありがとう、月島くん』
風の強い屋上の、フェンスを越えた。