第7章 偶然か、必然か
「…愛衣」
『覚えてて、くれたんだ・・・』
お互い驚いて、上手く言葉を紡げない。
『どうしてこんなとこに…?』
「それはこっちも聞きたいよ」
『私は、家にいたくなくて散歩してて。…私のこと覚えててくれたの?』
そりゃあ、何度も夢に出てこられたら嫌でも覚えるデショ。
でも確か、あの夢の愛衣は僕の深層心理が映し出した愛衣で、現実ではないんだっけ?
全く、おかしくなりそうだ。
これじゃあまるで完全にソッチの人じゃないか。
『あの、けーくん…』
その声にハッとして愛衣の方を見ると、不思議そうな顔をしてこちらを見ていた。
「…ごめん。何か言った?」
いけない。一人で考えすぎて話を聞いてなかった。
『ううん、、何も。あの、さっきも聞いたけど、けーくんはどうしてここにいるの?けーくんが住んでるの、隣町だよね。何年ぶりだっけ?』
「そんなに一度に聞かれても返事に困るんだけど」
ため息をついて下を向くと、視界にきらりと光る雫が落ちる。
『ごめ・・んっ・・嬉しくて・・・・・・・』
驚いて顔を上げると、目の前の愛衣は泣いていた。