第6章 君の名前を知っている
「……う、…っ!」
(寝てたッ…くそ!!!)
半強制的に寝ぼけた頭を覚醒させ、
路線図の下のサイネージを見ると、車両は目的より五駅ほど先を走っていた。
(ここで降りれば…間に合う!)
「次は○○です…」
車掌のアナウンスのあとにドアが開く。
勢いよくホームに飛び出して階段を駆け下りた。
・・・・・
あれからどれくらい走っただろう?
口の中は鉄の味がする。
最近部活にも出ていなかった分、少し運動しないだけですぐに衰えてしまう体力を恨みながら、
僕は知らない土地をずっとずっとさまよい続けていた。
何がこんなに僕を急かすんだろう。
その理由なんて簡単で、君が消えてしまいそうで怖くて仕方がないんだ。
君はきっと居場所を無くしてる。今の僕と同じように。
寄り添い合うなんて変だけど、そうじゃなくて、
同じ寂しさを感じたり、感じさせたりしたいんだ。
・・・・・
歩き続けていると、見知らぬ公園に行きついて。
・・足が棒のようだ。
「バカだな、僕は…」
ベンチに座り一人そんなことを考えていると、
『…けーくん?』
「…………え?」
僕のあだ名を呼ぶその声は、
昔よりも低かったけど、
はっきりと愛衣だと分かった。