第6章 君の名前を知っている
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「今日から、新しいお友達が来ます。名前は、西堂愛衣ちゃんです!ご挨拶できるかな?」
『…、はじめまして…愛衣です…よろしく、おねがいします…』
「はい!みんな仲良くしてね〜!」
初めてやってきた君は、ひどく引っ込み思案で。
まだまだ、うまくとけ込めずにいたのを覚えている。
「…ねえ。一緒にあそばない?」
『!!あそぶっ!!』
初めて声をかけたのは、僕からだった。
愛衣は、その歳で既に不思議な雰囲気を纏っていて、
僕は、子供心にそれに惹かれていたのかもしれない。
小学校に入学してある程度だったある日、愛衣が言った。
「けーくん、わたしがしんで、ないてくれる?」
発言の意味もろくに理解できないまま、たしか僕はこう返したはずだ。
「なくよ。たくさんなく。だって、愛衣ちゃんがいなくなると、さみしいじゃん」
そう言うと、君は幼い顔をさらにくしゃくしゃにして笑って…
それからのことだ。
君が突然、居なくなったのは。
「突然ですが、西堂愛衣さんは転校することになりました。」
僕には新しい友達も、環境もできて、忘れかけていたけど、
あれからも君は、知らない土地で僕を忘れずにいて。
僕だけが…
ずっと、ずっと…
君を忘れていたんだな。