第5章 あの子は誰だ
「ただいま」
「おお、帰ってきたか!」
「おかえり、蛍。大丈夫だった?」
「…うん」
家に帰るなり、帰省中の兄と、母がすぐさま僕の方に駆け寄ってくる。
「大丈夫か?怪我とかしてないか!?」
「…してないって。兄ちゃん大袈裟すぎ」
「明光も、蛍のことすごく心配してるのよ」
そうしてしばらくの間駄弁っていると、玄関のドアが開いた。
「ただいまー…って、どうしたんだ?みんなして揃って」
「あ、お父さん。ちょうどいいタイミングね。ご飯にしましょうか」
家族で食卓につくと、久々の帰省で気分がいいのか、兄は色んな話をし始める。
「ちょっと見ないうちに、蛍はすーぐ大きくなるなぁ。」
「そうかなあ。俺と母さんは常に見てるから、あんまり伸びたように感じないなあ」
「でも、蛍が他の子と並んでるのを見ると、やっぱり大きいなぁって思うわね」
「そうだな」
こんなに話が弾む食事は、割と久々かもしれない。
そして話題は昔の話になっていき…
「そういえば、蛍がちっちゃい頃によく遊んでたあの子、どうしてるんだろうなぁ」
「ああ、あの子ね!なんていったかしら…愛衣ちゃん?」
「ッ!?ごほっ、げほっ!」
「うわあ!どうした!?」
突然飛び出したその名前に、僕は思わず飲んでいたお茶を吹き出しそうになる。
「今…愛衣って言った…?」