第4章 日常、ずれていく
『こんにちは』
「…久しぶりだね」
『そうだね、久しぶり』
いつもの場所。いつもの愛衣。
前と違っているのは僕自身。
『今日は、私の話をしようと思って』
「いつも以上に突飛だね」
『だけど、この前そうするって約束したから』
にへらと笑って、愛衣は僕の方へ歩み寄る。
『私、できるならずっと眠っていたいの。うるさい世界が嫌いなの。毎日代わり映えのない日々が嫌になって、そうだな、簡単に言えば、死にたいかな』
「突然病み発言とか…本当に、僕は君のこと理解できないよ」
『そうだよね。』
「君はなんで、笑ってるの?」
『笑えば月島くんが可愛いって言ってくれるかなって思って』
彼女は僕の手を取り、きゅっとやさしく握りしめる。
「その腕」
『見るに堪えない?気持ち悪い?』
「…君は、そんなことをするくらい、何があったの」
興味本位の質問を投げかけると、
彼女は目を丸くしてまた笑った。
『キミからの質問、嬉しいな』
「ああ、やっぱり言わなきゃ良かった」
『だけど月島くん、やっぱり…』
その言葉の続きを聞く前に、僕は夢から覚めた。
・・・・・
「あ、起きた」
「ほんとにいきなり寝るんだね〜」
「!!」
時計を見ると11時20分。三時限目が終わったばかりのようだ。
クラスメイト数名が僕の机を囲んでいた。
「月島くん。寝ちゃうの、気にしなくていいよ!そのナルコ…レプシー?について、これから調べるつもりだから。」
「うんうん」
「だから、いつも通りここにいてね」
「…ありがとう」
くそ、調子が狂うな。
でも、新しい僕の日常として、これを受け入れなければいけないのかもしれない。
僕は眼鏡をかけ直して、机に向かった。