第1章 おやすみ、現実
その夜、月島蛍は夢を見た。
「(ここは何処だろう…?)」
あたりを見渡してみると、人っ子一人いない、真っ白な地に、僕一人だけが突っ立っていた。
ぼんやりとしたまま、足が向いている方へ進んでいく。
すると、人影のようなものが見えて、僕はぴたりと足を止めた。
「…誰かそこにいるの?」
『いるよ』
「…姿が見えない。君は誰?ここはどこなの?」
『どうして、気づいてくれないの?』
「え?」
その理不尽な返答に言葉を詰まらせた直後、視界が反転して、意識が遠のいた。
・・・・・
「………ん」
(夢…?)
携帯のアラームでだんだん覚醒していく脳。
瞼を開けると、目に映ったのは自室の天井だった。
(何か……変な感じだ……)
「蛍〜!!そろそろ起きなさ〜い!」
はっ、として携帯を開き画面を見ると、06:30の数字が並ぶ。
「…やば。朝練遅れる」
母さんの呼ぶ声に焦りを感じながら、僕は急いで布団から起き上がった。