第4章 花【進撃の巨人/エルヴィン】
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満月の夜。月明かりに照らされながら白いカーネーションを持って裏庭へと二人でやってきた。カーネーションの花言葉は「愛情」二人で選んだ送る花。風通しが良く大きな木の根元に石を積み上げただけの質素な墓ではあるが、が出来る精一杯の事をした結果だった。
「今日は、ずっと会わせてあげられなかったお父さんを連れてきたの。遅くなってごめんね」
花を供えて手を合わせる。
この日を迎えるまでに多くの事があった。巨人の捕獲、壁外調査。の怪我が完治した事により兵士としての訓練も始まっている。もちろん主な仕事はエルヴィンの補佐だ。忙しい日々が続いているが、何とか準備をしてきた。
「初めまして。俺はエルヴィン・スミス。君のお母さんの上司だよ。そして、お母さんをすごく愛している」
「お母さんもね、エルヴィンさんをすごく愛しているの。もちろんあなたの事も」
「だから、君の父親になってもいいだろうか?」
風が優しく凪いだ。
「ありがとう」
二人は同時に同じことを言った。見つめ合いにこやかに笑う。子供の笑い声が心に響いた気がした。
「二人で色々あなたの名前を考えてきたの。どれがいいか三人で考えましょう?」
「気に居るのがあるといいのだが」
二人は考えてきた名前を順番に言う。性別が不明なのでどちらに付けてもいい名前を何日もかけて選び出した。例え、自己満足と言われようとも。
風が吹く。月が隠れ朝日が昇るまで二人は墓前で話した。カーネーションの花びらが風に乗って空へ飛び行く。それが見えなくなるまで手を合わせた。
「また会いにこよう。二人で」
「はい」
~END~
→あとがきという名の言い訳