第2章 支配【進撃の巨人/エルヴィン】
あれから一週間。
彼女は変わらずここに居る。逃げる意思も無いのを確認してからは拘束していない。が、二人で居る時はトイレも食事も一緒に行う。元々手料理が上手かったのをしってはいたが、毎日彼女の手料理を食べられる幸せは何物にも代え難い。
「エルヴィン! おかえりなさい」
嬉しそうに駆け寄ってくる。小柄で童顔なので、ピンクのエプロンやスリッパがかなり似合う。私服もあるが、彼女は俺のシャツを着ている事が多い。今日も俺のシャツを着ているらしく、袖から手が出ていない。
「ただいま」
抱きしめてキスをする。全てが幸せだ。
あのあと彼女が全てを打ち明けてくれた。出会う前から記憶があった事。会うために自衛隊の道を選んだこと。そして、ウォール・マリア奪還作戦で互いに命を落とした事。
俺がスマホを壊したことで、彼女に脅迫が届く事は無かった。自衛隊を辞めたら手を出すつもりも無かったのかもしれない。だが、既に差出人は特定している。彼女の部下だった新人の男。既に手を下したので彼女に危険が及ぶことは無い。無駄に階級が上がってしまったのが幸いした。
「今日はカレーか?」
「うん! 海自に所属してる三笠から連絡があって、うちも金曜カレーにしようと思ってカレーにしちゃった」
「今度いずもを空母にする計画があって、今日海自に行ってきた。あの三人も相変わらずだな」
に夢中で気が付いていなかったが、自衛隊には前世で関わりのある人物が大勢居た。陸自、海自。所属はバラバラだが元気そうだ。
そして、今度の空母。海自と空自が共同運営する事になり、意図せず前世の調査兵が一堂に会する事となった。まあ、それはまた別の話だ。
「エル? 考え事?」
「何でもない。食事にしよう」
今はただこの幸せを噛み締める事にする。
~END~