第2章 支配【進撃の巨人/エルヴィン】
ウォール・マリアを奪還する最中、俺は命を終えた。シガンシナ区で戦っていた君の無事も確かめられず、きっと、後悔していた。一緒に生きる事も出来ず、幸せにする事も出来ず酷い男だな。
だから、次は、幸せにしてみせる。
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現代――。あれから千年以上経過した世界で、俺は前世の記憶を所持したまま新たな生を与えられた。あの気持ちが忘れられず、航空自衛隊の空将。それが俺の今の階級だ。米軍として伸し上がる事も考えたが、彼女はきっと日本人として生を受ける気がして、彼女の居る日本を守る為、日本の自衛隊にした。
そして、それは別の幸運も呼び寄せた。彼女が同期として航空自衛隊に居たのだ。しかし、前世の記憶があるのは俺だけで、彼女は俺を見てもただの同期として接してきた。だから同期として一緒にいられればいいと思っていた。
だが、その関係は簡単に崩れてしまった。俺の目の前から居なくなる。
「一等空佐! ご結婚おめでとうございます!」
「ちょ、そんな大声で止めてよ……恥ずかしいから……」
部下からの祝福の言葉で、顔を真っ赤にして幸せそうな笑顔を浮かべた。
彼女は本日付けで退職する。結婚するからだ。俺以外と結婚し、幸せになる。見守ると決めていたからいつかは来ると思っていた。なのに、いざなってみると素直に喜んであげる事が出来ない。
きっと、記憶が無くても、俺は彼女に恋をしただろう。記憶が無ければ素直に思いを伝えることが出来ただろうか?
「あ! スミス空将!」
俺を見つけて犬のように駆け寄ってくる。前世から変わらない笑顔で。
「お疲れ様です」
「ああ、もお疲れ。君が居なくなると、ここも寂しくなるな」
本心から祝えず、祝言も言ってやれない。自分の心を表に出さずあえて将として発言してしまう。将として発言するなら、祝言も言ってやればいいのにな。
ふと、心に魔が差した。