第6章 エピローグ
「ハッチさん、ソルマさん、本当にお世話になりました」
私は見送りに来てくれた黒猫亭の二人に深々と頭を下げた。
私は王都へ行く事にした。騎士団長を務める彼と一緒にいるには、王都へと移った方が良いから。
血の繋がらない私を本当の子供のように育ててくれたハッチさんやソルマさん、仲良くしてくれたリリアンに町の皆、離れるのはとても寂しいけれど、グレンさんの傍に居たいから私は王都行きを決めた。
…何故だか副団長さんがとっても喜んでいた。
で、今日は王都への出発の日だ。
グレンさんが私の荷物を馬車へと積み込んでくれた。お迎えの馬車が凄く豪華なもので驚いた。
どうやら長旅になるからと気を使ってくれたみたい。
「…」
「はいっ」
名前を呼ばれてグレンさんの傍へと並び立つ。グレンさんは今は騎士服では無いけれど、今までの髪の毛ボサボサの髭モサモサ姿では無くなった。
私が騎士服姿を格好良いと言ってから、お洒落に気を使うようになった気がする。
新しい服を着ると、頻りに似合うかどうか聞いてきた。
私はそんなグレンさんの隣へ並び、その手に自分の手を絡めた。
「えへへ」
「…」
悪戯っぽく笑えば、グレンさんも微笑み返してくれた。
「グレン、の事頼んだよ…まぁ、昔からを見守って来たあんたの事だ、大丈夫だろうけどね」
昔から?
女将さんの言葉に思わず首を傾げた。
「あぁ、大事にする」
不思議に思ったけれど、グレンさんの言葉が嬉しくて直ぐに疑問は忘れてしまった。顔が熱い。
「うん…うんうん、本当に、私は嬉しいよ…」
感極まって泣き出した女将さんの肩を旦那さんが抱いた。私まで泣きそうになって慌てて笑って見せた。
馬車へと乗り込み、窓を開けた。
「、幸せにね!」
リリアンが叫ぶと、宿のお客さんや町の皆も口々に祝ってくれる。
「何かあったら戻って来るんだぞー!」
「ちゃん、おめでとー!」
「おめでとーー!!」
私は馬車から身を乗り出して力一杯、皆へと手を振った。
皆の姿が見えなくなって寂しくなると、グレンさんがそっと抱き寄せてくれる。
──そして唇が重なった
私が好きになった熊みたいな人は
とっても素敵な騎士団長様でした。
END