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私が好きになったのは熊みたいな人でした

第5章 好きな人


小さい頃、お父さんの大きな手で頭を撫でて貰うのが私は大好きだった。
女の人とは違う、大きくて温かくて肉厚の、安心する手。それがそっと優しく私の頭を撫でてくれる。お父さんの手で撫でて貰うと、私は擽ったくて少し恥ずかしくて…でもやっぱり嬉しかった。

そんな事を思い出して目を開けた。


「…、おはよう」

目を開けたそこには、ベッドに突っ伏すように寝てしまっていた私の頭を優しく撫でているグレンさんの姿があった。朝日に照らされたグレンさんはベッドへッドに凭れ、髪の合間から覗いた瞳を細めて微笑んでいた。

「グレン…さん?」

「あぁ」

問いかけに、頷きを返してくれるグレンさん。

動いて、喋って…生きてる!!

「ぐ、グレンさ…」

ジワジワと涙が込み上げると、その様子を察したグレンさんが困った様に肩を竦めた。

「グレンさんっ!|

私はグレンさんへと飛び付いた。そんな私を余裕で受け止めると、首へとしがみつく私の背をグレンさんがポンポンと叩いてくれた。

「、心配をかけた」

私はグレンさんにしがみついたまま、頭を左右に振った。大丈夫だから泣くな、と耳元で囁いたグレンさんにきちんと言わなければと、少し距離を置いて涙を拭った。

「私のせいで大変な思いをさせてごめんなさい。助けてくれて…有難うございました」

あぁ、グレンさんが生きてる。それが嬉しくて自然と笑みが浮かんだ。そんな私をじっと見ていたグレンさん。

「…………」

彼の手が伸びて、私の後頭部に触れる。

グイと引き寄せられ…

──唇が重なった


「ん…」

グレンさんとの口付けは、髭で少しチクチクした。でも唇は意外と柔らかくて…
覗いたグレンさんの舌先が私の唇を舐めた。小さく一度ペロリと舐めて、そして顔を傾けると唇で私の唇を軽く食んだ。

「ふっ…」

私もそっと唇を開いた。するとグレンさんが嬉しそうに笑って、深く口付けようと体勢を変えた…ところだった。


コンコン


「さーん、ご飯の用意出来てるっすよー」

「!?」

扉の向こうから聞こえて来たのは騎士マルクさんの声だった。驚きに大きく体を揺らすと、我に返った私は顔が真っ赤になり、慌ててグレンさんから離れた。

「…マルク…」

そんな私に残念そうにしながら、グレンさんが低くマルクさんの名前を呼んだ。
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