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私が好きになったのは熊みたいな人でした

第4章 竜


俺がプレゼントしたウサギのぬいぐるみを、何時までも嬉しそうに抱き締める姿を見るとたまらなく幸せな気持ちになった。
こんな気持ちは生まれて初めてだった。最初は戸惑ったものの、受け入れてしまえばそれは暖かく、何よりも心地良い。


だから決めた。
おれはずっとを見守ろう。
そう思った。


そんな時に竜が現れた。
竜のせいで村が焼かれ、人が死に…国が荒れた。

国からギルドへ竜退治協力の要請が下った。

当然、ギルドで一番高いランクの俺へ特別な要請が来たが、俺は興味が無かった。名声を上げたい奴、手柄を立てたい奴、稼ぎたい奴、そんな奴等が好きにすれば良いと思った。

俺はとにかくから離れたく無かった。


そんな時だった、竜がの街の近くに現れたのだ。
まだ距離は有るが、下手をすればが暮らすコルトの町にも行きかねない。街自体も何処か緊張をはらみ、ピンと張り詰めた空気になっていた。

俺は心配になって、の様子を見に行った。

は、宿の裏で芋を剥いていた。
何処か元気が無く、泣きそうな顔をしていた。

「……おい」

俺はフードを被り、顔を隠すとついに話しかけた。俺の声に慌てて腰掛けていた樽から立ち上がったは、客と思ったのだろう俺へ「いらっしゃいませ」とペコリと頭を下げた。
スンと鼻を鳴らし、目元を擦った仕草を見るとやはり泣いていたのだろうか。

「ど、どうかなさいましたか?」

慌てて笑みを浮かべるの姿に胸がいたんだ。

「お前、何で泣いてるんだ?」

俺の問いかけに驚いた様に目を見開いたは、迷った末に口を開いた。

良く宿に泊まりに来てくれていた客が、竜に襲われて死んでしまったらしい。そしては、ここに泊まっている冒険者共が竜討伐に行ってしまう事が不安で仕方ないのだと言った。


──優しい優しい


君の涙の理由を無くしたい。
何よりも竜などにを傷付けられてなるものか。
君を必ず守ってみせる。



俺は、竜を倒す事を決めた。
誰よりも何よりも大切な君のために…





そうして、竜を倒した俺は竜殺しの英雄と称えられる様になる。だが、俺が私怨の為に竜を殺したと言うことは一部の人間しか知らない。
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