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私が好きになったのは熊みたいな人でした

第4章 竜


「ろーく、ごー…」

楽しそうに笑いながら、数を数えるオリオンさんが逃げる私をゆっくりと追いかけくる。

「はぁ、はぁ」

ふらりと体がよろけて肩を樹にぶつけた。足が言う事を聞いてくれない。それでも一刻も早く逃げなくてはと必死で足を動かした。けれどオリオンさんから余り距離を取れているようには感じない。

「さーん、にーい…」

気持ちが焦る。泣きそうになるのを必死で我慢した。

「いーち…ぜろ!時間切れー」

ザザッと落ち葉を踏み締める音がした。

「ひっ、嫌ぁ!」

ドクドクと自分の心臓の音が響く。気持ちが焦れば焦る程に上手く足が動かなくて私は転んでしまった。

「やだ、やだぁ!」

うつ伏せになりながら、私は前へ進もうと地面をかいた。けれど、そんな私の直ぐ傍でオリオンさんが囁いた。

「つーかまーえた」

「っ!?」

途端に肩を掴まれて仰向けに地面へと押さえ付けられた。私は思い切り手足を動かし体をよじった。

「嫌ぁ!放してっ、放して下さい!」

「うーん、それは無理な相談だなぁ」

私に馬乗りになって、見下ろしたオリオンさんが唇を濡らし舌なめずりして見せた。

「君は今から俺に犯されるんだから」

「やっ…」

薬のせいで力の入らない手で抵抗する私を余裕でかわしながら、私の服へと手をかけるオリオンさん。

「やめて、やめっ…グレンさ、グレンさん!!」

グレンさんの名前を呼んだ私にオリオンさんの顔が明らかに歪んだ。

「グレンさん!グレンさん!グレンさ…ッ!?」

バシンと音がして、次いで頬に熱い感覚と共に痛みを感じた。思い切り叩かれた頬に驚いて、つい呆然としてしまった。

「ごめんよ、ごめんね。でも君が悪いんだ」

何度もごめんと言いながら、オリオンさんは私の服のボタンを外していく。気がせいているのか何度かボタンを指から滑らせている。

「…でもね、君は凄く幸運なんだよ。俺はほら、騎士になるんだし。君も聞いただろ?王都から騎士が俺の勧誘に来てるって。そんな俺の愛人になれるんだから…あぁ、妻は無理だよ。妻は貴族の娘を貰わないといけないからね」

俺は騎士だから、と口にするオリオンさんは何処か正気で無い気がした。
オリオンさんが私の首元へ顔を寄せた。

「大丈夫、最初は痛いかもしれないけどすぐ慣れるよ」

好きだよちゃん、とオリオンさんが囁いた。
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