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私が好きになったのは熊みたいな人でした

第4章 竜


あれは、俺がまだ駆け出しの頃だった。

どんなクエストも一人で達成出来た。自意識過剰ではなく、俺には誰にも負けない実力があった。それでも、一人では入る事が出来ない場所と言うのがあって、たまたま居合わせた奴等とパーティーを組んだ時の事だった。



「くっ…」

俺はどうしてもそこの洞窟の最奥で採れる鉱物が欲しかった。だから、俺は適当にギルドで…近くに居た奴等とパーティーを組んだのだ。
今思えば、そいつ等はそいつ等なりに良くやっていたと思う。けれど当時のいきがっていた俺には、奴等は役立たずとしか思えず。当然そんな俺だから、洞窟の最奥に辿り着く頃にはパーティーの仲は最悪なものになっていた。

「あいつら…ポーション全部持って行きやがった…」

洞窟の最奥に辿り着いた時、予想外の強敵に出会った。それでも普段ならば数人でかかれば何とかなった相手だが、狭い洞窟内でしかもパーティーの連携は最悪。
最後には俺以外は逃げ出し、俺一人が残された。そして更に最悪な事に預けた荷物まで一緒に持って行かれたのだ。

何とか魔物は倒したものの、俺は脇腹に傷を負った。

「っ、クソっ…水すらも、無し、かよ…」

荒い呼吸をつきながら、なにか無いかと漁るが何も出て来なかった。ここまで来るのに二日かかった。
水も食い物も無く、しかも深手を負った状態。

それでも、あいつらへの恨みか意地か、俺は出口へ向けて歩き出した。






「っ、ぅ…」

血も水分も不足して、頭が上手く働かない。乾いた舌が張り付いて声すら出なくなっていた。岩の合間から染み出る僅かな泥水や魔物の血をすすり肉を食らい、文字通り這うように洞窟から抜け出した。


しかし、街道までは出たものの、そこでとうとう力尽きた。

俺の見た目は汗や泥、魔物の血やら自分の血で全身真っ黒に染まり、服もボロボロ。とても見られたものでは無かった。
先程もそんな俺と関わりたく無いと足早に通り過ぎた奴がいた。

俺だってこんな厄介な奴になど関わりたくないと思うだろう。いや、もしかしたらもう死んでいると思われたのかもしれない。

街道沿いの樹に体を預けたまま、体が動かない。



──あぁ、俺もここまでか…


誰にも負けない自信があった。城の騎士にすら負ける気がしなかった。そんな俺がこのざまか…



口元が小さく引き上がり、情けなさに笑いが込み上げた。
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