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私が好きになったのは熊みたいな人でした

第3章 騎士と犯罪者


今日も朝からグレンさんは出かけている。

出かける時に、私に外出する時は独りで出かけないようにとしっかり言い含めていた。何時もは口数の少ないグレンさんが自分から積極的に私に話しかけて、注意してくれたのだから勿論従うつもりだった。

でも…
やっぱり騎士の存在が気になっていた。


昼も過ぎ、昼食の片付けをしていた所だった。

「「キャーー!!!」」

外から女の子達の黄色い声が聞こえて来たかと思うと、バターンと勢い良く宿の扉が開いた。そして余りに勢いが強過ぎたのか、壁に当たって跳ね返った扉は、扉を開けた誰かへとぶつかった。

「いてぇ!」

宿の中が一瞬静まり返る。跳ね返った扉で鼻をぶつけたのだろう、痛みに顔を押えて蹲る人が何だか可哀想で、私は恐る恐る声をかけた。

「あ、あの、大丈夫ですか?」

私の声に涙目で顔を上げた男の人は、茶色の髪に大きめの緑の瞳。ソバカスが人懐っこさをさらに強調していた。
誤魔化すようにへへッと笑った彼は、後ろから聞こえた足音に慌てて道を開けた。

「失礼、その馬鹿は気にしないで下さい」

木の床にブーツの踵の音を響かせて入って来たのは、キラキラと輝いて見える程に綺麗な男の人。切れ長の冷ややかな瞳に艶のある銀色の長髪。動く度にサラリと髪が肩を滑る。
冷たい印象はあるものの、こんな綺麗な男の人を私は今まで見たことが無い。
しっかりと着込まれた騎士の隊服がとても良く似合っていた。

「お忙しい所申し訳ありません。私はグランハイド騎士団のレイ・マクスウェルと申します。人探しのご協力をお願いしたい」

レイ・マクスウェルと聞いたリリアンがキャァ!と黄色い声を上げた。そしていそいそと私の傍へやってきた。

「あの方、副団長様よ!?まさか生きている内に拝見出来るとは思わなかったわ!」

自身は小声のつもりなのだろうけれど、結構な声の大きさのリリアンへ一度視線を向けてから、騎士の人は女将さんの方へと歩き出した。

「この様な人物に心当たりは有りませんか?」

取り出された紙に描かれた似顔絵が僅かに見えた。


──ドクン


「…その似顔絵に描かれた人物が何だってんだい?」

女将さんはフンと鼻を鳴らし、騎士を訝しげに見返した。

私は先程見えた似顔絵に動悸が激しくなっていた。
だって、だって…あの似顔絵はどう見ても…


──グレンさん本人だったから
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