第3章 掴んだ手がかり
カラ松警部は早速デスクのパソコンに向かった。キーボードのカタカタという音がいつもよりリズミカルに聞こえる。
「いつもよりのってるね、カラ松」
「すまんが話は後にしてくれ」
トド松警部が話しかけたが、そっけない返事が返ってきた。
「あらら。噂通りだねぇ」
だが検索していたカラ松警部の手が止まる。
「ああ…!取り扱ってる店はもうないのか…!」
なんとそのスピーカーを売っていた店はすでに経営不振で倒産していたのだ。しかもスピーカーを扱っていた唯一の店だった。倒産したのも4年前だ。
「せめて近所に知っている人がいれば…!」
「カラ松、僕も行くよ!」
「トド松…!助かる!」
二人でその店があった場所に行き、少しでも情報がないか探る。だが4年も前とあってなかなか有力な手がかりが掴めない。そんな中。
「ああ、その店ならおばあちゃんが知ってるかも」
「本当ですか?!」
その老婆のところへ行くと、その頃のことを話し始めた。
「あの電気屋さんをやってた人は、とてもいい人でしたよ。でもあの日、柄の悪い男が数人来て、何もかも奪って行ったんだよ」
「それは、こんな男でしたか?」
持ってきたブラック容疑者の写真を見せる。
「そう!こいつだよ、こいつ!こいつがあの気のいい電気屋さんを倒産に追いやったんだ!」
「その電気屋さんの名前、わかりますか?」
「ヴァカボーンさんだよ。せっかくいい家を建てたってのに、かわいそうにねぇ」
「その電気屋に、女性が来ませんでしたか?」
「そんなの、何人も来てるよ。私もお世話になったから」
カラ松警部は鞄の中からスピーカーを出した。
「これを買った人を探してるんです!」
老婆はそれをしげしげと見る。
「これは電気屋さんのショーウィンドウに置いてあったものだよ。気づいたらなかったねぇ」
「……そうですか。ありがとうございました」
これ以上有力な手がかりは得られそうにないと判断し、老婆に礼を言って立ち去るカラ松警部。
「お待ち」
「はい?」
「これを見ていた娘さんなら知ってるよ」
「本当ですか?!」
「べっぴんだったからよく覚えてるよ」
そう言って似顔絵を書いてくれたが、老婆は驚くほど絵がうまかった。出来上がった絵は、カラ松警部が心に抱いていた、マスクを外したミューズの顔そのものだった。