第4章 練習。
今日の俺はマネージャーではなく、準レギュラー陣の練習相手をしていた。
10分程度しか続けて動けないが、休憩を入れながらなら多少は長く動ける。
『1人5分ずつ、交代で俺が相手する。このチームのプレイスタイルなら誰でも真似出来るから、希望があれば言ってくれ』
俺の言葉に来須たちからはチートだ!と声が上がる。
『まあ、俺もそう思うけど、実戦では使い物にならないんだよな。所詮はコピーだからオリジナルには勝てないって灰原先輩にも言われてる』
それでも練習で多少は役に立つんだなこれが。
ほら、練習で出来ないことは試合でも出来ないって言うだろ。
全てはどれだけ練習して、努力したかによるんだ。
「本当に器用なやつだよ、橘は」
「うむ。試合に出れないのが惜しいな」
休憩中に臼井先輩と水樹先輩が声をかけてくれた。
『ありがとうございます。でも俺は満足してますよ。ハンデと引き換えに、この能力はあると思ってますから。みんなの役に立つなら、チームの勝利につながるなら、俺は試合に出れなくてもいいです。それに俺が出るとレギュラーのイス1つ減りますよ?』
俺は先輩2人に向かってとにやりとする。
「どうしよう、臼井。橘にレギュラー取られる」
「…水樹、お前はもっと堂々としたらどうだ。キャプテンだろ。橘も水樹で遊ぶのは程々にしろよ。それとも俺と遊ぶか?」
今度は臼井先輩がにやりと笑って、ビニールテープをチラつかせてた。
『ひっ!すみませんでしたー!』
「分かればいいよ」
俺はちょっとやりすぎたかと思ったが、臼井先輩の声は楽しげな響きが残っていた。
「お前たちのおかげでレギュラー陣も気合が入るだろう」
臼井先輩の言うとおり、水樹先輩は橘が狙っていると慌てながら猛練習を始めていた。
『いや、どうあがいても俺はレギュラーにはなれないのに』
「それは分からないよ。橘はサッカーセンスが良い。だが、ハンデがあるのも確かだ。まあ、無理だけはするなよ」
そう言い残し、臼井先輩も練習へと戻っていった。
俺もちょうど休憩が終わり、また練習を始める。
動きがどんどん良くなるチームメイトを見て、正直嬉しさと嫉妬が湧いた。
俺もみんなのように出来たらな、とそう心の隅で思ってしまったのだった。