第32章 最愛
祈里や音羽が手を貸せばいいのだが、やはりまだ蟠りはあるもので2人とも理解はしているが行動に移せずにいた。
珠世が息を切らしながらも走っていたとき、突然愈史郎が立ち止まる。
「どうしたんだ??」
愈「黙って待ってろ。」
突然止まった愈史郎を不思議に思った隊士が声をかけるが、愈史郎は冷たく言い放つ。
そして、背負っていた鞄から大量の目が描かれた紙を撒き散らしはじめた。
「何してんだよオイッ!!」
意味のわからない行動に隊士も声を荒げるが、無視して目を撒き続ける愈史郎。
祈「あの目が描かれた紙…鴉たちも首から下げてますけど、なんなんですか??」
祈里は近くにいた珠世に尋ねると珠世は息を整えながらゆっくりと説明する。
珠「あの紙が愈史郎の血鬼術です。あの子の血鬼術は視覚──…あの紙を媒介にして視覚を操作するんです。あの目が見た景色を共有することやあの紙を身につけた者の姿を見えなくしたり、視覚を操ることも可能です。」
祈「その血鬼術が上弦ノ肆に対して有効なのですね。」
珠「はい。」
祈「……珠世さん。」
珠「なんでしょうか??」